無題
久し振りに市内から出た。学校だけど。原チャリでブゥーーンと。
昼間の外はとても良いもんだった。
暑くもなく寒くもなく、晴れてもなく曇ってもなく、走る道は都会でもなく田舎でもなく、ちょっと緑が多いふつうの住宅街。
ロンT一枚がこの上なく気持ち良い。秋の気候は最高だ。小田和正がぴったりくるような風景、人々。
俺はこの街が本当に大好きなんだな、と思った。
こんな昼下がりにのん気に原チャリで走っている自分が学生だという紛れも無い事実と、この愛すべき生活も街も手放さなければならない現実、さらにそのためにやらなければならない事が積もっている焦燥感・危機感。
一瞬の間にいろいろ浮かびあがってきて涙すら出ない。
*
学校に行くいつもの道には2ヶ所、花が供えられている場所がある。
家に近い方は俺がこの街に引っ越してきた当時から、学校に近い方はその1年くらい後からだっただろうか。
その学校に近い方に今日、一人の女性が佇んでいた。車ばかりで歩行者はあまり通らない道路の端、真新しい花束の前でしゃがんで携帯をいじっていた。
遺族の方だろうか、それとも友人・恋人だろうか。供えられている花はいつも見ていたが、花を供える人は初めて見た。
ふいに声を掛けたい気持ちに駆られたが、そのまま脇をすり抜けた。
"自分の身近な人が事故で死んだ"なんてことは世にありふれてて、何ら珍しいことではない。でもそんなありふれた人でも、きっと人とはちょっと違う世界観の中で暮らしているんだろう。
"定期的に花を買い、親しかった者が死んだ場所へ供えに行く"。特別な行動ではないけれど、特定の人しかしない行動。
その時どんなことを思うんだろう。どんな景色が見えているんだろう。もう何年も同じことをしていて慣れているのだろうか。
見た目だけでは分からない、内にある想いや見ている世界。そういうのがありふれた風景の中にも充満しているんだろうな、と感じさせられた一瞬だった。
何年経っても供えられ続けている2ヶ所の花は、俺にとっては事故らないように気を付けるための戒め。それと、いつまで経っても変わらないものとしてそこにある、どこか俺を安心させてくれるものです。ありがとう。
2 Comments:
なんか、すごくいい話ですね。日常のひとこまなのに、心情も風景も浮かぶような…。
短編小説を読んだような感じになりました。
日常の中で、そういうことに気づいて何かを思うって、たまにはあるんだろうけど、記録しないとそのうち忘れちゃったりします。
ていうか文章めちゃくちゃ上手いっすね!
>shiGeさん
どうもありがとうございます^^
最後の一文は嬉しいような恥ずかしいような何か申し訳無いような…^^;
ありがとうございます。
そう、小さなことが何か心に引っ掛かって、忘れないうちに残しておきたいと思い、"やるべき事"を放っぽってまで書いた次第です。
お互い大変ですよね〜。
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